2022/06/30
両親の英才教育を受けてヤクルトや野球への愛を膨らませるようになったフリーキャスターの山本萩子さん。MLB特集番組のMCや、メジャーリーグ中継のゲストで野球の深い楽しみ方を伝えて評判の山本さんは、幼稚園児の頃から神宮球場に通い続けてきた。25年間追いかけてきたからこそ感じるヤクルトの魅力、ファームからつながる現在の強さの秘訣を後編では聞いた。
健気に応援し続けて鍛えられた!?
私はヤクルトファンの両親のおかげで子どもの頃からスワローズファンになりました。自分自身で球場に足を運ぶようになった高校生の頃は弱かった時代で、横浜に住んでいたこともあって周りからは「なんでヤクルトが好きなの?」としょっちゅう聞かれましたね。
でも一度好きになったら、チームの変遷を含めて応援していきたいと思うのはプロ野球ファンの方には共感してもらえると思います。やっぱり、好きなものは好き。そういう気持ちがずっとありました。
負けが込んでくると、「最近は若手が出てきたから良し!」とか、「今日は先発がちゃんと試合を作ったから良し!」と、少しでもいい要素を見つけ出していました。ヤクルトファンの多くがそうなのかなと思いますが、健気に応援してきたことで精神的に鍛えられたかもしれません(笑)。
ドラ1左腕への熱烈な想い
ファームから見ていると、選手への思い入れも強くなります。今、特に頑張ってほしいと願っているのが寺島成輝投手。履正社高校時代に最速150km/hの剛腕投手として甲子園でも活躍し、2016年ドラフト1位で入団しました。
でも、ファームで何試合か見たときには高校時代のような強い真っすぐが影を潜めていたんです。バックネット裏で見ていたら、真っすぐが全部カットボール気味で球速130km/h後半くらいでショックを受けました。
自分のピッチングを気持ちよくできる投手だったはずなのに、プロ入り後は故障で苦しみましたし。入団から時間が経つにつれて焦りもあるだろうし、下からの押し上げもあるだろうし……。
それが数年前に一軍のオープン戦を見ていたら、バッターのインコースに強い真っすぐでどんどん勝負していました。その姿を見て本当に感極まってしまい、「ああそうだよ。これだよ、これ」っていう気持ちになったんです。
そう感じたのは、ファームから見ていたからだと思います。鳴り物入りで入団し、なかなか結果が出ないで苦しんで、フォームを変えたり、強い真っすぐを投げられなくなってしまった時期を経て、また強い真っすぐが投げられるようになった。それがすごく嬉しかったんです。今はまた苦しんでいるので心配しているし、同時にすごく期待もしていますし、本当に頑張ってほしい投手です。
「ナガタケ」&快速ルーキーに期待
ファームで見てほしい選手はたくさんいるなか、特にそう思うのはセカンドの武岡龍世選手。今年、長岡秀樹選手が一軍でショートのレギュラーをつかみかけていますが、去年まではファームで「ナガタケ」コンビで二遊間を組んでいました。ともに高卒3年目で、武岡選手も開幕前には一軍のオープン戦に出ていました。
守備はすごく安定感があって、私の好きなタイプです。「ナガタケ」はそれほど大きくはないですけれど、スピードがあるし、器用さもある。バッティングでも野球センスが伝わってきて、二人で未来のスワローズを担う存在になっていきそうな感じがします。もちろん山田哲人選手という偉大な二塁手がいますが、若手が出てくるとチームとして層が厚くなるので、ぜひ武岡選手には期待したいですね。
ルーキーでは、一軍でも出始めたドラフト2位の丸山和郁選手。春季キャンプではスイングの強さを意識し、いろんな人に評価されていました。走攻守そろっていて、未来のリードオフマン的な存在になりそうな期待感もありますね。
チームを支える捕手陣の厚み
今季のスワローズはキャッチャーの層が厚くなっています。中村悠平選手がケガで開幕を出遅れたなか、高卒2年目の内山壮真選手が出てきました。
一方、主にファームにいるのが松本直樹選手。2017年ドラフト7位で社会人から入団した当初から、守備力に関しては群を抜いていると言われていました。肩の強さと送球の正確性もあり、ブロッキングもうまくて、リードも安定感がある。今のスワローズには古賀優大選手もいますが、絶賛成長中のファームの若手にとって、松本選手はお手本になる存在だと思います。チームを成長させるためにすごく必要な戦力です。
私の印象として、強いチームには各世代にいいキャッチャーがいます。例えばカープが2016年から3連覇した頃には、石原慶幸選手という大御所がいて、その下の世代に會澤翼選手がいて、坂倉将吾選手など若手がどんどん出てくる。チームの要がしっかりしていると、相乗効果でどんどん良くなっていくように感じます。
そういう意味で今のヤクルトは、松本選手を含めてキャッチャーの層がどんどん厚くなっています。西田明央選手も応援しているので、頑張ってほしいですね。
「ファミリー球団」の真意
プロ野球ファンにはご存じのように、ヤクルトはよく「ファミリー球団」と言われます。小さい頃から見てきて思うのは、雰囲気の良さが上辺だけではないということです。チームカラー、首脳陣のやり方など、しっかり内側から湧き出ているファミリー感というか、雰囲気の良さがあると思います。
特に今は若手もベテランもすごくバランスよくプレーしているからこそ、若手もあまり恐縮せず、伸び伸びプレーできる環境がある。そこも含めて、選手が輝けると思います。だからこそ選手個々の能力が単純に発揮されるだけではなく、相乗効果でどんどんチームが良くなっていく。実際、そういうシーンもすごくたくさん見ています。
春や秋のキャンプを見に行くと、走塁や守備の基礎をすごく練習している印象があるんですよね。練習量だけでなく、例えば走塁練習ではキャッチャーを想定してホームベースにペットボトルを置くなど、ベースランのやり方もすごく徹底している。私は他球団のキャンプも見に行きますけれど、ヤクルトは「今の強さはたまたまではない」と思わせてくれる練習の仕方をしています。
真中満監督の頃に「自主性」というテーマを掲げていましたが、そういう部分もキャンプの練習を見ていると感じます。ノックを見ていると、状況設定も含めてすごく細かくやっていて面白いんです。
最近では古田敦也さんが臨時コーチとして来て、キャッチャーの意識改革もありました。しっかりした基礎、地盤があった上での雰囲気の良さがある。キャンプに行って練習を見ていると、そういう部分も見えてきます。色眼鏡で見てしまっているかもしれないですけど(笑)。
高津監督と黄金期へ
ファームから一軍まで見ていくと、ヤクルトの未来は明るいなって感じます。
去年は6年ぶりのリーグ優勝、20年ぶりの日本一を達成しましたが、正直、「いやあ、“今年は”本当に強かったな」って思っていたんですね。でも、そうではないかもしれません。“今年は”ではなく、強いチームの野球ができ始めている感じがするんです。
そこにはやっぱり高津臣吾監督の手腕があると思いますね。高津さんが二軍監督時代に育ててきた選手が主力にいて、指揮官のマネジメント力が発揮されている。それも日本、メジャーリーグ、韓国、台湾、そして日本の独立リーグでの経験が活きた上でのマネジメントだと思います。
もしかしたら本当に黄金期が来るのでは……。そう予期してしまうほど、今のヤクルトは連日いい試合をしています。ファンとして、毎日楽しくて仕方ありません。
インタビュー/構成:中島大輔 企画:This、スカパー!